白馬のたてがみが揺れる
生まれて初めて、担当しているお客さんからプレゼントを頂いた。
そーっと破かないように包装紙を開けると、中身は粗品という上書きの熨斗紙が貼られた薄くて軽い箱だった。
箱の中には、ジルスチュアートのハンカチが3枚。色はピンクと水色と白で、それぞれメリーゴーランドと馬車とお花の刺繍が入った可愛らしいハンカチ。
全く粗末な品ではない。大変だ。
嬉しかった。すんごく嬉しかった。けど、嬉しいと思う前に「そんなもの貰えるほどの事してない!!」って思ってしまった。ていうか、無意識に言ってた。口に出てた。
だって、特別な事はなんにもしていない。他のお客さんと同じように、電話で注文取って発送しているだけなのに。
その人のことは、60代のおばさまだということしか知らない。会ったこともないわたしに、こんな素敵なプレゼントができるなんて、一体どんな人なんだろう。何年経ってもそんな素敵な女性になれる気がしない。
すぐに電話でお礼をしたけど、この嬉しさがうまく伝わった自信が無い。あまりにも嬉しいので、仕事が終わってから実家に寄って自慢をした。
母には「うわ、ジルスチュアート似合わな〜い!」って笑われたけど、その後に「すごいことだよ、よかったね」って言ってもらえて満足した。
このハンカチに見合う接客サービスをしなきゃいけないなと思ったし、このハンカチが似合う女になりたいなと思った。ジルスチュアートとは縁遠いところで暮らしているわたしにとって、後者はかなり難易度が高い。
でも、毎日持ち歩いて、手に取るたびに今日のことを思い出そう。そう決心したら、なぜだか泣きそうになった。